*長野1人旅   (後編)

翌朝、目が覚めた時には幽霊も怪奇現象も、
なにも起きなかった事に少し残念な気持ちになった。
そう、都合がいいのです。

宿を出て、コンビニで朝食を調達する事に。
サンドウィッチとコーラを買い、駅の観光案内所へむかった。
案内所にはさまざまなパンフレットがあって、
行きたい所が決まっていない僕は、きれいに並んだパンフレットを
見ただけで気がとおくなった。
その中の1冊をなにげなくパラパラと見てみると、
地図の片隅に水車とそばの文字が!
山奥のそば屋?水車? そば粉をひく為の?
美味しくないはずがないっ!と言うわけですぐに行き先が決定してしまった。

長野駅から高速バスにのり、いざ出発!
しかし、バス停からバス停までの距離が遠い遠い。
そしていつしか眠っていたらしく、気がつくと聞いた事のある停留所が
アナウンスされていたので、慌てて“つぎ止まりますボタン”を押し下車。
早速、案内所でもらった地図で確認すると、1つ手前で下りてしまった事に気付く。
「やってしまった」
次のバスがくるのは1時間半後。
近くにいた老夫婦にそば屋までの道を尋ね歩く事に。
老夫婦は「この道をまっすぐ行けばつくよ」と教えてくれた。
礼を言い立ち去ろうとした時に「こっちからいったほうが眺めがいい」
と脇にある小さい道をさした。
どうせならと思いその道を選択し歩き始めたのが大失敗となる。
眺めのいい所を歩こうとすれば、太陽から丸見えにならなくてはならない。
暑すぎ、疲れすぎ、景色を楽しむ余裕なんてまったくない。
おまけに人も車も、な〜んにも通らないし、ただひどくつかれる。
そしてようやくたどり着いたそば屋は、僕が想像する砂漠のオアシスそのものだった。
世界一美味しいそば。あえて説明はしないが、いままでの概念を根底から覆すそば。
いつか、妻と一緒に世界一美味しいそばを食べに行こうと思っている。
同じルートで。